この記事の方向性:
「強くしないと効かない」という感覚は、凝りがひどいからではなく、神経系があるパターンに入っているサインかもしれません。その仕組みを辿ります。
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フィットネスの現場でよく聞く言葉があります。それはマッサージに通っている人の話。
「指圧の強いマッサージを受けても私は痛みを感じないんですよ。だからもっと効かせるために強くお願いしています。」
「施術の後は確かに楽になりますね。でも翌日にはもう戻っている。」
さて、そのように「自分は凝りがひどいから」と思っているけれど、どこかで「本当にそうなのか」と疑いながら通っている人もいらっしゃいます。
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少し、科学的な話をさせてください。
首や肩の筋肉が慢性的に収縮し続けているとき、そのシグナル(合図)は脳に送られ続けます。
最初は「危険信号」として処理されます。ところが同じシグナルが何週間も繰り返されると、神経系はそのシグナルを「普通の状態」として扱い始めます。
騒がしい場所に長くいると、いつの間にか騒音が気にならなくなるのと同じ仕組みです。音を無視しているわけではなく、「これはいつものことだ」と判断して、意識に上げなくなる。
身体の緊張でも、まったく同じことが起きています。

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では、軽く触れても「何もされていない」と感じるのはなぜか。
感度が低くなったからではありません(あなたが強いわけでもないかもしれません)。
神経系が、普段の緊張を「背景」として処理しているために、それより弱い刺激が届きにくくなっているのです。
強い圧力だけが、その背景を超えてくる。だから「効いている」と感じる。エンドルフィンと呼ばれる鎮痛物質も一時的に出るので、気持ちよくもある。
しかし、「筋肉の状態」は変わっていません。
翌日にまた戻るのは、そういうことです。
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ここで起きているのは、こういう"パターン"です。
強い施術を受けるたびに、神経系は「この強さが通常の刺激だ」と学習していきます。だから次に来たとき、同じ強さでは「何もされていない」と感じるようになる。さらに強くしてもらう。また学習する。
求めるほど、遠ざかっていく。
これは意志の問題でも、体質の問題でもありません。神経系がそういう構造を持っているだけです。

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この話を知ったとき、多くの方が少し驚きます。
「じゃあ、ずっとそれをやり続けていたということですか」と。
そうかもしれません。でも、その繰り返しの中で身体がおかしくなったわけでも、弱くなったわけでもない。ただ、神経系がある状態に慣れていっただけです。
慣れたものは、別の方向からほぐすことができます。
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ひとつ、試してみてください。
首の後ろか肩のあたりに、片方の手をそっと置きます。ここでは押しません。圧力をかけない。ただ、置くだけ。
そのまま、ゆっくり3回、息を吐きます。できれば吐くときの方を長く。二倍の時間をかけて。
最初は「何もない」と感じるかもしれません。2回目、手の温かさが皮膚に届き始めます。3回目、その下の組織がわずかに変化するのを感じるかもしれない——感じないかもしれない。
そう、感じなくてもいいんです。
目的は「ほぐすこと」ではありません。「強くしないと感じない」と思っていた身体が、じつは繊細な変化を受け取れることを、少しだけ注意をむけてみることです。
自分の今のパターンに自覚的になる。気づきが生まれる。
刺激は強くなくても大丈夫です。
気づきが生まれるには"余白"が必要。
余白があるからこそ気づきの風は流れ込みます。
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次回は、道具との関係について書きます。
使わなくなった道具を、捨てずに持ち続けることの意味。それは「続かなかった」という話ではなく、身体の中で起きていた変化の話です。
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01 | 首は、いつから休めなくなったのか
何もしていないのに、疲れている感覚について
02 | 「効いている感じ」が強すぎるときに起きていること
刺激を求めてしまう身体の話
03 | 道具を使わなくなる瞬間について
それでも、手元にある意味
04 | 首が静かになると、判断が変わる
身体の状態と、思考の距離
05 | また日常に戻るための、ひと休み
休みっぱなしにしないという考え方
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執筆:早田 航(Tri-Aid 日本正規代理店)
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